ウィンブルドン 2009 決勝
R・フェデラー 3 (5-7 7-6(6) 7-6(5) 3-6 16-14) 2 A・ロディック
この決勝、どれだけの人がこれだけの熱戦を期待しただろうか?正直ほとんど居ないように思われる。過去の対戦成績(フェデラーの18勝2敗)は元より内容においてもフェデラーが圧倒していた。それだけにこの決勝も公開処刑に近い物になるのでは?とさえ思われていたのではないか。少なくとも当方はそうだった。
そもそも、ロディックが決勝に上がってくることすら意外だったと言わざるを得ない。第1シードのナダルが欠場したトップハーフにおいては本命マレー、対抗デルポトロと思われていたと考えて間違いないだろう。昨年の全米で破れたとはいえまだまだ伸びて行くであろう大英帝国期待の星であるマレー、全仏ベスト4にしてフェデラーをフルセットマッチまで追い詰めたデルポトロが居るトップハーフにおいてロディックは伏兵以外の何物でもなかったはずだ。
フェデラーに関しては順当かと思われそうだが個人的にはそうは思わなかった。特に第4シードのジョコビッチがいる以上全盛期ならともかく今のフェデラーが簡単に勝ち上がれるようなボトムハーフでは無かったはずだ。
しかしながら、果たして決勝に残ったのはフェデラーとロディックであった。ロディックがフェデラーに対して優位に立っているのはサービスのスピードだけであろう。そのサービスにしてもプレースメントを含めた総合的なサービス力はフェデラーが上回っているように感じる。フォア、バック、ボレー全ての技においてロディックが上回る物は皆無と言えよう。
ただこの試合、サービスにおいてエースの数こそフェデラーが圧倒していたが、サービスの時のポイント奪取率はロディックも相当高かったと言える。エース自体はそんなに多いわけではなかったが、フェデラーはなんとかラケットにあてるだけで相手コートに返球出来ないでいた。サービスポイントという意味では互角ではなかったか。ストロークでロディックが打ち勝つ場面が随所に見られた。準決勝の対マレー戦の充実度をそのまま決勝に持ち込んできたかのようだ。
第1セットは静かな立ち上がりだった。ロディックがサービスの力に物を言わせ危なげなくキープすると、対するフェデラーも確実にキープ。相手に全くブレークポイントを与えないまま淡々とサービスキープをお互いが続けていく。第1セットの山場は第11ゲーム、ロディックのサービスゲームにおいてフェデラーが遂にブレークポイントを握る。ここで一気にフェデラーが畳みかけるかと思ったがロディックがサービスで何とかしのぐ。4度ものブレークポイントを凌いだロディックが何とかキープ。次は後一歩まで追い詰めながらブレークしきれなかったフェデラーのサービスゲーム。誰もがこのゲームが非常に重要だと認識する中、ロディックがブレークポイントを握る。このたった1度のチャンスを掴み取ったロディックが第1セットを先取した。
第2セットも第1セットと同じようにキープ合戦が続く。最終的にタイブレークまでもつれ込む。ここでロディックの2ミニブレークアップとなり6-2とセットポイントを握る。誰もがロディックがこのセットを奪うと思ったが、ここでロディックが守りに入る。今までの積極的なプレーから一転してフェデラーのミスを待つような消極的なプレーに変わってしまう。こうなるとフェデラーが巻き返しに入る。致命的だったのはバックのハイボレーをコート外に放り出してしまったプレーだ。確かに簡単なボールではなかったが、明後日の方向に飛ばしてしまうようなボールでもなかった。これに気落ちしたのか結局ロディックはこのセットを落とす。
このままズルズルと第3セットも落とすかと思われたロディックであったが、ブレークは出来ない物の自分のサービスゲームは確実にキープ。このセットも第2セットに続きタイブレークに突入。このタイブレークもフェデラーが奪いセットカウントを2-1と追い詰める。
ただ、ここまでの試合内容を見ているとロディックがあっさり負けていくとは思えなかった。第4セットはまさにその通りで先にブレークしたのはロディック。そしてその後は自分のサービスゲームをキープし6-3とし、2セットオールと振り出しに戻す。
いよいよ運命の第5セット。ウィンブルドンは最終セット(男子は第5セット、女子は第3セット)に関してはタイブレークがない。どちらか一方が6ゲームを取った時点で2ゲーム以上の差がない場合は延々とゲームが繰り返され、2ゲーム差が付くまで試合は続けられる。結局このセットもお互いにサービスキープを繰り返し、相手にブレークのチャンスさえ殆ど与えないままゲームは進んでいく。電光掲示板には10-10、11-11、12-12...と見たこともないようなスコアが伸びていく。永遠に続くかと思われた第5セットであったが、第30ゲームに遂にフェデラーがロディックのサービスをブレークする。フェデラーは本試合において初めてのブレークであった。
第5セット、フェデラーが先にサービスを行い、次にロディックのサービスの順番であった。これが勝敗に少なからず影響したのでは無かろうか。フェデラーが常にゲームを先行し、ロディックはそれを追いかけ続ける形になったわけだ。精神的に余裕があったのはどちらかと言えばフェデラーだろう。フェデラーの場合自分のサービスゲームを落としても挽回するチャンスが1ゲームある。それは簡単なものではないけれど。ロディックの場合自分のサービスゲームを落とすことは即敗退に繋がる(先のゲームでブレークしていた場合は除く)。その分フェデラー以上にプレッシャーがかかっていたのではないだろうか。
敗者がいるからこそ勝者が引き立つと言うことに異論はないが、この試合に限っては簡単に勝者・敗者ではくくれない内容だったと感じる。昨年のナダルvsフェデラーの決勝を超える試合は今後出てくることは無いだろうと思っていたが、それに勝るとも劣らない決勝を見れたことは1テニスファンとして幸福以外の何物でもない。
ロディックは今後もまだグランドスラムタイトルを狙える力が十分にあることを証明した。この敗戦を乗り越えることは容易ではないだろうが、再び立ち上がり栄冠を勝ち取る日が来ることを切に願う。

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